相続人に外国籍の人がいる場合の対応について
2025/02/18
相続人に外国籍の人がいる場合の対応について
相続手続きにおいて、相続人の中に外国籍の方がいる場合、またはその方がかつて日本国籍を持っていた場合、特別な手続きや書類の準備が必要となることがあります。今回は、その基本的な流れや必要書類、相続税の取り扱いについて詳しく解説します。
1. 外国籍の相続人がいる場合の基本的な注意点
外国籍の相続人がいる場合、日本の民法に基づいて相続手続きが進められます。ただし、日本の戸籍制度に登録されていないため、通常の相続手続きとは異なる点が多く、特別な書類が必要になります。
(1) 必要書類と手続きの違い
外国籍の相続人の場合、日本の戸籍謄本や住民票の写しが取得できないため、以下の代替書類を用意する必要があります。
戸籍謄本 → 出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書、宣誓供述書 (発行元:本国の役所、大使館・領事館)
住民票の写し → 外国の住民票、または宣誓供述書 (発行元:本国の役所、大使館・領事館)
印鑑証明書 → 署名証明書(サイン証明) (発行元:大使館・領事館、公証人)
相続関係説明図 → 日本の公証役場で認証を受けた宣誓供述書 (発行元:公証役場)
署名証明書とは?
外国では印鑑証明書が存在しないため、相続人が自らの署名が真正であることを証明する書類を用意する必要があります。これは、大使館や領事館、公証人の認証を受けることで発行されます。
書類の翻訳と公証
これらの書類は外国語で発行されるため、日本語訳を添付し、公証役場での認証を受けることが必要になる場合があります。
2. 相続税について
外国籍の相続人がいる場合でも、日本国内に相続財産がある場合は相続税が課される可能性があります。さらに、被相続人(亡くなった方)が外国人である場合、相続税の納税義務が異なります。
(1) 相続人の納税義務の範囲
相続税の課税範囲は、相続人や受遺者(遺言によって財産を受け取る人)の納税義務の区分によって決まります。
納税義務者の種類と課税対象の財産
- 無制限納税義務者 (国内外の財産すべて)
- 制限納税義務者 (日本国内の財産のみ)
無制限納税義務者とは?
日本に住所がある相続人
過去10年以内に日本に住所を有していた相続人
制限納税義務者とは?
日本に住所がない相続人
過去10年間日本に住所を有していない相続人
ポイント:
相続財産が日本国内にあるかどうかが、課税対象を判断する重要なポイントになります。
納税管理人の選任が必要になるケースがあるため、早めの対応が推奨されます。
3. 元日本国籍者の場合の手続き
元日本国籍の相続人の場合、過去の日本国籍の証明が必要となることがあります。
(1) 必要書類
必要書類
日本国籍喪失証明書・・・日本国籍を喪失したことを証明する書類 (発行元:法務局)
帰化証明書・・・他国籍を取得した際の証明書 (発行元:外国の役所)
戸籍の除籍謄本・・・日本国籍を持っていたことの証明 (発行元:市区町村役場)
日本国籍喪失証明書とは?
日本国籍を失ったことを証明する書類で、相続手続きで日本国籍の有無を確認するために求められることがあります。
翻訳と認証が必要
外国で発行された書類(帰化証明書など)は、日本語に翻訳し、公証役場で認証を受ける必要があります。
4. 遺言に関する注意点
(1) 外国で作成された遺言の取り扱い
相続手続きにおいて、遺言書がある場合、日本の方式だけでなく、外国の方式で作成された遺言も一定の条件下で有効となることがあります。
- 日本の公証人役場で作成された公正証書遺言は、国内手続きで有効
- 外国の法律に基づいて作成された遺言は、各国の法律を確認し、日本での手続きに適用できるか判断する必要がある
- 遺言書が外国語で書かれている場合、日本語訳を添付し、公証人の認証を受けることが求められる
遺言が適法に作成されているか確認するため、専門家に相談するのが望ましいです。
5. まとめ
相続人の中に外国籍の方がいる場合、またはその方が元日本国籍者である場合、通常の相続手続きに加えて追加の書類や手続きが求められます。
✅ 主な注意点
- 外国籍の相続人は、日本の戸籍謄本や住民票がないため、代替書類(出生証明書や宣誓供述書など)が必要
- 相続税の納税義務は、相続人の住所や過去の居住状況により異なる
- 元日本国籍者の場合、日本国籍喪失証明書や除籍謄本が必要となることがある
- 外国の遺言書も有効な場合があるが、日本語訳と公証が必要
相続手続きが複雑になりがちなケースでは、行政書士に相談することで、適切なサポートを受けることができます。
外国籍の相続人に関する相続手続きでお困りの際は、ぜひ専門家にご相談ください。